板わさのない立ち飲み屋

 虎ノ門で仕事が終わったのが、夕方の5時過ぎ。雨の中を、サラリーマンの街・新橋まで、歩いて、馴染みの立ち飲み屋で一杯やることにした。すでに、店内には、先客が数人、カウンターに肘をつきながら、グラスを重ねている。中には、赤い顔をして、すっかり出来上がっている年配客もいる。
 
 燗酒に、煮込み、もつ焼きを4本頼んで、無料サービスのキャベツを齧る。もつ焼きの煙と隣の客の吸うタバコの煙に燻されながら、ぼんやりと壁の品書きに目をやる。ほとんどのつまみが200円前後。何も考えず、ただ、ぼんやりと過ごす。自然と肩から力が抜けてゆく。この時間がいい。堪らなく良い。
 
 おごりや接待で、出かけてゆく、クラブや洒落たレストランでは、けっして味わえない1人きりの時間。店の隅から流れてくるテレビニュースに目をやりながら、燗酒をおかわり、さらに冷奴を注文する。ここで飲む酒は、純米吟醸や大吟醸といった高級酒は似合わない。飲みすぎると翌日、がんがんに、二日酔いするような、銘柄も知らない安酒に限る。「ぬる燗」だの「人肌」だの細かい注文は云いっこなし。薬缶から直接、注がれる酒を黙って飲む。残念なのは、立ち飲み店では、板わさというメニューをほとんど見かけることがない点だ。
 
 立ち飲みがいいのは、へべれけになる前に、足が疲れてしまう。ほんの30分ていどで切り上げる客が大半だ。だから、立ち飲み屋で喧嘩や揉め事をしている場面に遭遇したことがない。隣の客に、むやみに、話しかけないのもエチケット。そして、何より、嬉しいのは、お勘定。この日も1500円でお釣りがきた。
 
 こんなことを書いていたら、また、飲みたくなってきた。今夜は、大塚の居酒屋にでも出かけるか。
 おじさんが、ささやかな幸せを感じる一瞬。





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この記事へのコメント

  • 立ち飲みに行けない人間

    うらやましいな。
    通勤、車だし。
    うちに帰ってビール飲むことしか知らないのです。
    日本酒も飲めないし。
    翌朝、頭痛いのもイヤだし。
    なんとなく、怖い感じで。
    2012年07月07日 09:43

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